「いい写真」と「いい診療」には3つの条件がある?

愛用のカメラです。中央にあるのがモードダイヤル。シャッタースピード、絞り、露出のうち、どの要素を優先するかを選ぶためのダイヤルです。

 

最近はスマホでも十分きれいな写真や動画が撮れますね。それでも、個人的には撮影専門機(一眼カメラやビデオカメラ)の方が良い画像・映像が撮れるような気が何となくして、今でも専用機で撮影することが殆どです。

 

その際、いつも迷ってしまう項目があって…それが絞り、シャッタースピード、露出(≒ISO)の3つの設定です(※他にも、ホワイトバランスだとか、構図だとか、被写体選びだとか…さまざまな要素はあるのですが、今回はそこは割愛します)。

この3つは複雑な関係性があり、どれかを優先すれば、他の項目に影響が出る(こちらを立てれば、あちらが立たず)という少々厄介な関係性で成り立っています。

 

例えば、撮影の際の手振れを抑えたいと考えてシャッタースピードを小さく(短く)すると、絞りを小さくするか、もしくはISOを強引に上げるという事をしなければなりません。でも、絞りを小さくすると画面全体が暗くなったり、いわゆるボケ味(中心となる被写体を浮かび上がらせるように周囲を敢えてボケさせる写真)を作りにくくなる。また、暗い場所で露出を不必要に上げると、ザラついた汚れ(カラーノイズ)が出て美しさが損なわれるetc…といったデメリットが生じます。

 

撮影の際にこれらの要素をバランス良く、手早く調整するためには、素人であっても(自分の事は棚に上げて書きますが)それなりの知識や経験が必要となります。

 

(で、ここからは医療の話です)

 

…「いい診療」を行おうとする場合にも、同じような難しさがあるなぁと感じることがあります。

この場合、いくつかの組み合わせが考えられると思いますが…ひとつの例として「診察の丁寧さ」「費用」「受診のしやすさ」という3要素の組み合わせを挙げてみます。

 

丁寧な検査や診察を行おうと思えば、必然的にひとりひとりの患者さんへの検査項目が増え、診察時間も長くなる可能性があります。一方でそうすることにより、診察費が高くなってしまったり、他の患者さんの待ち時間が増えてしまう場合がある(⇒派生して、経営的な部分でも問題が生じうる)…みたいなジレンマです。この辺りは、普段あまり病院を受診しないという方でも、何となく想像して頂けると思います。

 

(話をもう一度、カメラの方に戻します)。

 

知り合いの女優さんにモデルになって貰ったポートレート写真です。絞りを開き気味にして撮影しています。



先ほどから「いい写真」という漠然とした表現をしていますが、プロのカメラマンさんの書かれた本などを読んでも「いい写真」の条件とは、必ずしも「手振れ」「ボケ味」「明るさ」の3要素でミスが少ない…ということだけでもないようです。

 

激しく手ぶれをしているけれど、胸を打つ写真というのはあるし、カラーノイズなんてまったく気にならないという人もいる。周辺がボケた「ふわっとした」写真よりも、四隅までくっきり映っている方が美しいという場合もあるでしょう。身も蓋もない言い方をすれば「いい写真の定義は人それぞれ」という事になります。

 

ちょっと強引な理路になりますが、「いい診療」という場合にも、似たような事が言えるのかも知れません。

 

患者さんの中でも「待ち時間が長くなっても、しっかり話を聞いて診察して貰える」ことを何よりも大切と考える方もいらっしゃれば「とにかく安く早く診察を済ませてほしい」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

有名な心理学者の河合隼雄さんは著書の中で「ふたつよいことさてないものよ」という言葉を(御自身の好きな言葉として)よく引用されていました。何か一ついいことがあると、別の側面で必ず一つ悪いここも起きる。世の中とは、難しい(けれど面白い)ものだなぁ…みたいな意味と理解しています。

 

二つでさえ難しいのに、三つの要素のバランスをうまく取るというのはもっと難しいですよね。

 

…と、ここまで長々と書いて結局何を言いたいのかと言えば、「いい診療」の提供ってやっぱりなかなか簡単じゃない、という一言に尽きます。

 

そんなこと誰でも知っている?…ですよね。失礼しました。

 

それでも一つだけ確実なことがあるとすれば…そもそも撮る道具自体がなければ写真は撮れないし、同じようにそのための資格や場(施設)がなければ、診療自体も行えないということです。

 

たまたまの巡り合わせでクリニックという場を与えられたにすぎない身ですが、その事に深く感謝して(いろいろ厳しい面もありますけど…)日々の診療を続けていきたいと思います。

 

ちなみに、どこかで読んだWEB記事によると「読みやすいブログ記事(文章)の条件」というのがあって、その一番の条件は「結論は最初の方にズバッと書き、その後の理由説明の部分も出来るだけ簡潔に(一文一文は短めにして)短く」ことだそうです。

 

なるほど…

 

少なくともこの文章が「いいブログ記事」でないことは確かなようです。次回以降、気をつけます。

 

(でも、とりとめもなく続く文章を好まれる方も、少ないかもしれないけれど居る可能性はありますよね??)

 

今回も読んで頂きありがとうございました。

 

千代田区心療内科クリニックで、昨年12月より(前の院長から引継ぐかたちで)院長を務めています。宜しければHP☟へも遊びに来ていただけると嬉しいです。

 

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