11月の不思議な出来事…

永田勝太郎先生の命日(11月11日)の前後にはたくさんの花やお供え物がクリニックに届きました。

 

2022年11月11日は、現在勤務する「千代田国際クリニック」の創設者であり前院長の永田勝太郎先生が亡くなった日です。

先日1周忌法要が永田先生の故郷である千葉県銚子市にて行われました。

 

今で先生を慕う患者さんから、花やお供え物などがクリニックにもたくさん届きました。待合室には永田先生の写真が常設されているため、(画像のように)頂いた贈り物も一緒に飾らせて頂きました。

 

命日の前日11月10日(金)には、クリニックでちょっとした出来事がありました。

午前中の診察中に小さな地震がありました。さほど大きくない地震でしたが、比較的長めの間(体感で30秒ほどでしょうか?)揺れは続いたと思います。

揺れが収まった後、待合室で診察をお待ちの患者さんから「永田先生が手を振ってる!」と声が上がりました。「えっ?!」とスタッフが待合室に出て見てみると…待合室の先生の御写真の周りの花々が(地震の余波で)微かに揺れており、それがまるで《永田先生が、にこやかに手を振っている》ように見えたとの事でした。

ほんの一瞬ですが、先生(の魂)が本当に訪ねて来たかのような感覚をそこに居合わせた皆が感じたようでした。

 

「そんなことは単なる偶然(思い過ごし)だ」というのが、ごく常識的な受け取り方だろうと思いますし、ことさら神秘主義的・宗教的な出来事として強調したい訳でもありません…それでも、私たちにとってささやかだけど特別な体験だったのも事実です。

 

永田先生が追い求め続けた『全人的医療』を具現化する為に生まれたこのクリニックも、生みの親の先生が亡くなられて、はや1年が過ぎました。この1年間だけでも本当に様々な出来事があり、関係者一同、心が休まる日は殆どなかったと思います。

そんな中で、もしかしたら永田先生がスタッフや患者さんに「後押し」や「ねぎらい」(のサイン)を送ってくれたのかも知れません。

直面すべき現実は依然ありますが、少しでも長く、この場所で診療を続けられたら…と思います。

 

千代田区心療内科クリニックで2022年12月より(前の院長から引継ぐかたちで)院長を務めています。HPにも遊びに来ていただけると嬉しいです。

 

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『犬のおまわりさん』は(職業人として)有能か?

 

前回、童謡(こわれたクラリネットの歌)についての記事を書き、自分の周りで少しだけ好評だったので、今回も童謡をモチーフに書いている。

 

誰もが知る「犬のおまわりさん」という童謡がある。迷子の子猫と犬のお巡りさんが2人とも泣いているというサビの描写が昔から好きなのだが、それでも子供のころは単純に「(童謡とはいえ)だめなお巡りさんだなぁ」という風にも感じていた。泣いている迷子に対して、積極的に捜査を進めるわけでなく、ただ一緒に泣いているだけというのは、無策すぎるのではないか?…と(そこまで明確に言語化して考えていたわけではないけれど)そう漠然と感じていたと思う。

 

でも時を経て、まがりなりにも医療関係の知識や経験を積むにつれ「ひょっとして、あのおまわりさんは、むしろ有能だったのではないか?」とも想像するようになった。

名前も住所も言えない迷子の子供に対し、それ以上無暗に質問を重ねるでもなく、持ち物や衣服からあれこれ詮索するでもなく、ただ一緒に泣いて相手の不安や痛みを共有する。

そして『自分は味方であり安心していい』ということを無言のうちに子猫に対して示し、そのことで子猫が自ら「お家(親猫)を探そう」という意思が芽生えてくるのを導こうとしているのではないか?と。(解釈が多少飛躍しすぎかもしれなけれど)

 

とある高名な精神科医の先生が書いた本に「強い孤独や不安を訴える患者さんに対して、敢えてこちらも『困っている』という態度を示すことが(テクニックとして)有効なことも多い。でもその場合も『あなたを援助したい』とこちらが思っている事はしっかり相手に示しておく必要がある」という趣旨の記述があったことを思い出す。

 

日々診療をしていると、いろいろな症状の患者さんが医療機関にいらっしゃる。当然ながら症状もその苦しみの度合いもさまざまで、加えて最近は患者さん自身が『医療に求めるもの』も千差万別になっているなと強く感じる。自分の未熟さのせいもあるけれど、求めるものを上手に汲み取れず、患者さんとの関係性が少なからず損われてしまう(損なわれてしまいそうになる)場面も少なくない。

 

そんな時、ふと「犬のおまわりさん」の事を思い出す。さすがに現実として患者さんと一緒にわんわん泣くだけと言う訳にもいかないだろうけれど…それでも(即座に良い解決策が見つからない場合でも)まずは「自分たちはあなたの味方で、一方的に検査や治療(ときに説教も?)を押し付けるためにここに居るわけじゃない」ということは(言葉以外の部分で)さりげなく示したい。そういうことは、想像以上に有用なんじゃないか?と思ったりしている。

(とはいえ、現実にはなかなか思うようには行かないものだけれど)。

 

千代田区心療内科クリニックで2023年12月より、前任の院長から引継ぐかたちで院長を務めています。宜しければHPにも気軽に遊びに来ていただけると嬉しいです。

 

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(追記)ちなみに、件の迷子の子猫がその後(童謡の中で)どうなったのかが未だに分からない。ネットで調べてみた所「犬のおまわりさん」の歌詞が2番までは存在する事は確認しているのだが、それでも「子猫の素性は分からない…」という描写で終わっている。もし(例えば3番以降の歌詞が存在するなど)その後の顛末を御存知の方がいれば、ご教示頂けると幸いです。

 

 

クラリネットは玉ねぎだった??

 

先日、知り合いの俳優が出演する舞台を観た。シェイクスピア劇(ヘンリー四世)を下敷きにした「悪い仲間」(作・演出/河合祥一郎)というオリジナル作品である。

劇中「オー、パッキャマラド、パッキャマラド、パオパオパパパ」のフレーズが印象的な「クラリネットをこわしちゃった」が使われていたのだが…この曲が、実はフランスの軍歌(原題「玉ねぎの歌」)が起源であったことを初めて知った。

ちなみに「パッキャマラド、パッキャマラドパオパオ(パパパ)」の部分は「進もう戦友よ、進もう戦友よ、進もう、進もう、進もう!」といった意味とのこと。

知らないのは自分だけかと思っていたが、終演後、一緒に鑑賞した数人に恐る恐る尋ねてみたら、皆一様に「初めて知った」とのことで、少し安心する。

 

それにしても、日本の子供たちが「おー、ぱっきゃまらど〜」とクラリネットを吹く仕草をしながら歌うのを、フランスの人はどんな気持ちで眺めていたのだろう?…と、想像すると少し不思議な気分になったりした。

一方「あの曲は元々、戦意高揚を目的とした軍歌なのだ。だから子供たちに歌わせるべきではない!」という風な声がこれまで(一部の人から)上がらなかったのかな?…とつい余計な心配もしてしまった。

 

「本筋から言えば◇◇である(⇒だから、あくまでこちらが正当だ)」しかし「現状、世間では△△として一般認識されている(⇒それにはそれなりの正当性があるのだから、現状維持で良いじゃないか)」みたいな意見の対立は昔からあって、時に小さくない諍いへと発展する場合もある(それは例えば「正しい言葉遣い」みたいなことから、日常生活レベルのマナーや常識、果ては法解釈や歴史認識に至るまで、さまざまなトピックスが当てはまる)。センシティブなテーマであれば、感情的にもなりやすくなり、なかなか冷静になれないことも多い。

 

どちらが正しい、というのではなく…その両方をうまく納得させるような提案は出来ないものかと、都度考えてみる。もちろん良い案など(少なくとも自分には)簡単には浮かぶはずもない。

だが、仮にそういった昇華が可能だとして、それはより高次な(スマートな)提案というよりも、むしろ「その論争自体がばかばかしく感じられるような」新しい視座の提供という形で成立しうるのではないか?という予感はある。

 

とにもかくにもフランスの軍歌を、敢えて「クラリネットが壊れてさぁ大変だ」という突き抜けたテイストの歌詞へと変換した(当時の)翻訳者の感性に、個人的には改めて感心しつつ(同時に何かのヒントのようなものも感じつつ)劇場をあとにした。

 

(舞台自体はとても面白かったです)

 

…読んで頂きありがとうございました。

 

千代田区心療内科クリニックで2022年12月より(前の院長を引継ぐかたちで)院長を務めています。宜しければHPにも遊びに来ていただけると幸いです。

 

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来世で彼女が医師になりたい理由!?


先日、大学時代からの知人で、現在はフリーアナウンサー(芸能事務所所属)をしている女性と数年ぶりに会って話をした。

 

彼女は大学卒業後、かねてからの夢であったTV局のアナウンサーとなり、その後フリーに転身した後は、結婚し2人の子供の子育てをしながら現在も現役で活動中。更にそのフィールドは劇場映画監督、女優業、ミュージシャン、アナウンス講師…と幅広い分野に及んでいる。…その充実した生きざまに、少し羨ましささえ感じる時がある。

 

そんな「リア充の塊?」とも呼べそうな彼女だが、久しぶりに会って最初に口にしたのが「次に生まれ変わったら医者になりたい」というフレーズ。反射的に(世俗的な?)理由がいくつか頭に思い浮かんだものの、一応「どうして?」と尋ねてみる。彼女から返って来たのは(少なくとも自分にとっては)意外な理由だった。

 

曰く「医師はサービスを提供する側なのに、サービスを受けた側(患者さん)から必ずお礼を言われる…そのことが《本当に》羨ましい」とのこと。「そういう職業って、実はすごく稀なんだよ」と…更に私に向かって「普段、患者さんからお礼を言われるのが当たり前だと思ってるでしょう」と言い、小さく笑った。

 

「いや、ちょっと待って…」と思わず言いかける。「サービスを提供した側がお礼を言われる業種は、医療だけじゃないと思うけど…それに、お礼を言われるのが当たり前だと思っているなんて、そこまで傲慢では…」といった反論が頭をよぎるが「でも、案外当たっているのかもしれないなぁ」とも思い至り、言葉が出なくなってしまう。

 

それにしても、華やかな世界で長年第一線で働いてきたという履歴から、今まで「誉め言葉」「お礼」「励まし」など浴びるように受けてきたのだろう…などと勝手に想像して(≒高を括って)いたけれど、彼女が仕事の上で何よりも求めていたのが、「ありがとう」というシンプルな感謝の言葉だったという事実に、いろいろな事を考えさせられてしまう。

 

…自分が当たり前と感じている状況が、傍から見ると僥に映るという事は(何事によらず)思いの外多いのだろう。

 

ところで、患者さんが医療者にお礼を伝えるのは(日本人的な)礼儀正しさの表れかもしれないし、あるいは「医者は不機嫌にさせない方が得だ…」という警戒心(処世術)によるのかもしれない。幾分ひねくれた発想かも知れないけれど、そうした可能性も踏まえておかないと、とは思う。

 

また(動機が何であれ)相手から感謝を一方的に与えられるばかりというのも、妙に気が落ち着かない。そもそも医療も広義のサービス業であることは事実なのだから、顧客に対して謝意を伝えるのは筋だとも思う。が、だからといって患者さんに向かって「よく来てくれましたね、ありがとう。また来てくださいね!」などとストレートに言う訳にもいかない(多分)。

 

現状では「受診してくださってありがとう」という代わりに「どうぞお大事に」という常套句に、せめてもの感謝の気持ちを込めるくらいしかないのだろう。伝わるかどうかは分からないけれど…

 

ちなみに、その知人であるアナウンサーさんには近々、我々のクリニックの広報のためにちょっとした協力をお願いする予定である。その話については、また別の機会にお伝えできればと思う。

 

千代田区心療内科クリニックで昨年12月より(前の院長から引継ぐかたちで)院長を務めています。宜しければHPにも遊びに来ていただければ幸いです。

 

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「いい写真」と「いい診療」には3つの条件がある?

愛用のカメラです。中央にあるのがモードダイヤル。シャッタースピード、絞り、露出のうち、どの要素を優先するかを選ぶためのダイヤルです。

 

最近はスマホでも十分きれいな写真や動画が撮れますね。それでも、個人的には撮影専門機(一眼カメラやビデオカメラ)の方が良い画像・映像が撮れるような気が何となくして、今でも専用機で撮影することが殆どです。

 

その際、いつも迷ってしまう項目があって…それが絞り、シャッタースピード、露出(≒ISO)の3つの設定です(※他にも、ホワイトバランスだとか、構図だとか、被写体選びだとか…さまざまな要素はあるのですが、今回はそこは割愛します)。

この3つは複雑な関係性があり、どれかを優先すれば、他の項目に影響が出る(こちらを立てれば、あちらが立たず)という少々厄介な関係性で成り立っています。

 

例えば、撮影の際の手振れを抑えたいと考えてシャッタースピードを小さく(短く)すると、絞りを小さくするか、もしくはISOを強引に上げるという事をしなければなりません。でも、絞りを小さくすると画面全体が暗くなったり、いわゆるボケ味(中心となる被写体を浮かび上がらせるように周囲を敢えてボケさせる写真)を作りにくくなる。また、暗い場所で露出を不必要に上げると、ザラついた汚れ(カラーノイズ)が出て美しさが損なわれるetc…といったデメリットが生じます。

 

撮影の際にこれらの要素をバランス良く、手早く調整するためには、素人であっても(自分の事は棚に上げて書きますが)それなりの知識や経験が必要となります。

 

(で、ここからは医療の話です)

 

…「いい診療」を行おうとする場合にも、同じような難しさがあるなぁと感じることがあります。

この場合、いくつかの組み合わせが考えられると思いますが…ひとつの例として「診察の丁寧さ」「費用」「受診のしやすさ」という3要素の組み合わせを挙げてみます。

 

丁寧な検査や診察を行おうと思えば、必然的にひとりひとりの患者さんへの検査項目が増え、診察時間も長くなる可能性があります。一方でそうすることにより、診察費が高くなってしまったり、他の患者さんの待ち時間が増えてしまう場合がある(⇒派生して、経営的な部分でも問題が生じうる)…みたいなジレンマです。この辺りは、普段あまり病院を受診しないという方でも、何となく想像して頂けると思います。

 

(話をもう一度、カメラの方に戻します)。

 

知り合いの女優さんにモデルになって貰ったポートレート写真です。絞りを開き気味にして撮影しています。



先ほどから「いい写真」という漠然とした表現をしていますが、プロのカメラマンさんの書かれた本などを読んでも「いい写真」の条件とは、必ずしも「手振れ」「ボケ味」「明るさ」の3要素でミスが少ない…ということだけでもないようです。

 

激しく手ぶれをしているけれど、胸を打つ写真というのはあるし、カラーノイズなんてまったく気にならないという人もいる。周辺がボケた「ふわっとした」写真よりも、四隅までくっきり映っている方が美しいという場合もあるでしょう。身も蓋もない言い方をすれば「いい写真の定義は人それぞれ」という事になります。

 

ちょっと強引な理路になりますが、「いい診療」という場合にも、似たような事が言えるのかも知れません。

 

患者さんの中でも「待ち時間が長くなっても、しっかり話を聞いて診察して貰える」ことを何よりも大切と考える方もいらっしゃれば「とにかく安く早く診察を済ませてほしい」という方もいらっしゃるかもしれません。

 

有名な心理学者の河合隼雄さんは著書の中で「ふたつよいことさてないものよ」という言葉を(御自身の好きな言葉として)よく引用されていました。何か一ついいことがあると、別の側面で必ず一つ悪いここも起きる。世の中とは、難しい(けれど面白い)ものだなぁ…みたいな意味と理解しています。

 

二つでさえ難しいのに、三つの要素のバランスをうまく取るというのはもっと難しいですよね。

 

…と、ここまで長々と書いて結局何を言いたいのかと言えば、「いい診療」の提供ってやっぱりなかなか簡単じゃない、という一言に尽きます。

 

そんなこと誰でも知っている?…ですよね。失礼しました。

 

それでも一つだけ確実なことがあるとすれば…そもそも撮る道具自体がなければ写真は撮れないし、同じようにそのための資格や場(施設)がなければ、診療自体も行えないということです。

 

たまたまの巡り合わせでクリニックという場を与えられたにすぎない身ですが、その事に深く感謝して(いろいろ厳しい面もありますけど…)日々の診療を続けていきたいと思います。

 

ちなみに、どこかで読んだWEB記事によると「読みやすいブログ記事(文章)の条件」というのがあって、その一番の条件は「結論は最初の方にズバッと書き、その後の理由説明の部分も出来るだけ簡潔に(一文一文は短めにして)短く」ことだそうです。

 

なるほど…

 

少なくともこの文章が「いいブログ記事」でないことは確かなようです。次回以降、気をつけます。

 

(でも、とりとめもなく続く文章を好まれる方も、少ないかもしれないけれど居る可能性はありますよね??)

 

今回も読んで頂きありがとうございました。

 

千代田区心療内科クリニックで、昨年12月より(前の院長から引継ぐかたちで)院長を務めています。宜しければHP☟へも遊びに来ていただけると嬉しいです。

 

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はじめまして。


昨年12月より都内の心療内科クリニックで院長を務めています。

 

新規開業ではなく、開設した医師が昨年秋に逝去し、その跡を継ぐ形での就任でした(※亡くなった前院長とは血縁関係ではありません)。

 

長らく他施設で勤務医をしていて、突然そのクリニックを引き継ぐことが決まったという経緯もあり、今もある種の戸惑いを抱えつつ日々の診療を続けているところです。

 

先日、スタッフから「診察する医師の考え方などが事前に分かっている方が、初めての患者さんは受診しやすいと思いますよ」とのアドバイスを受け、今更ですがブログを始めることにしました。

 

このブログは一応、医療系というカテゴリーになると思います。…ただ内容としては「個別の疾患や治療法の解説」や「今すぐ役に立つ医療知識」といった現実的・客観的な情報というよりも、どちらかというと「日々の診療の中で感じた事、考えている事」などを自分(たち)なりの視点でのんびりと綴って行きたいと思います。

 

興味を持って頂ければ嬉しいです。

 

宜しくお願い致します。

 

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